[打楽器8重奏] 道化師の朝の歌 (ラヴェル, M / arr. 早乙女道彦)

　原曲にはピアノ独奏版とオーケストラ版の二種類がありますが、この編曲ではニュアンスが鍵盤打楽器に近いピアノ独奏版をもとに、オーケストラ版からは作曲者の意図した色彩感や打楽器の扱い方を取り入れています。したがって、両方の版を聴いて研究することをおすすめします。また、アンサンブルコンテストに使用することを想定して、あらかじめVib.(原曲ではバスーン)のソロから始まる中間部(練習番号J ?)の一部をカットして、全体の演奏時間が5分以内におさまるように配慮していますので、原曲通りの長さで演奏したい場合には、適宜カット部分を補充する必要があります。
スムーズにバランスよく演奏をするためには、楽器配置に配慮が必要ですので工夫してみてください。
　Glock. パートは比較的出番が少なく負担が少ないように見えますが、登場するところはすべてよく目立つ重要な役割を担っています。練習番号J からM の中間部ではマレットの指定をしていませんが、全体のバランスや音楽の変化を考慮して金属・プラスチック・木などいろいろな種類を試して、場面にあったマレットを使用してください。
　Mar.1 の練習番号F からとP からの三連符の連打のソロは、原曲通りだと手順が難しくなるので途中三連符ではない部分を作って演奏しやすくしてありますが、もし原曲通りでも演奏できそうだ、という奏者がいたら、原曲通りにすべて三連符の連打に戻してトライしてみてください。
　Mar.2 は跳躍するパッセージが多い比較的難易度の高いパートですが、演奏の充実にはきわめて重要な鍵を握ります。
　Vib. は叩き方だけでなくペダルの使い方が重要なポイントです。楽譜上にはペダルの指示をほとんどしていませんが、ペダルをどう使って余韻をどこまで残すか、あるいは区切るかを常に意識する必要があります。特に練習番号I からの中間部のソロは、原曲のピアノ独奏でのペダリングやオーケストラ版のバスーンソロのニュアンスを参考に、表情豊かな演奏が期待されます。
　Timp. パートに出てくるBamboo Scraper はいわゆる「ささら」という竹を細く裂いて束ねたものですが、最近は百円均一ショップでも置いているようです。Timp. はチューニング替えが多く、役割もベースやメロディーを担当している部分がありますので、オーケストラ版のスコアを参照してみてください。
　Perc.1 に出てくるCroutales を持っている団体は少ないと思いますが、フィンガーシンバルやマンジーラ、アンティークシンバルというような楽器で十分効果的です。音程はGlock. を重ねているので、ずれていてもそれほど気になりません。値段もCroutales に比べればずっと安価で入手も容易です。少し効果は劣りますが、トライアングルでも代用可能です。また、練習番号WのCastagnettes の持ち替え時間が非常に短いので、指を紐に通すタイプでは厳しいでしょう。柄がついているタイプまたは台に固定されたマシン・カスタネットを使う必要があります。
　Perc.2 のB.D. とCymbals(合わせシンバル)は、合わせシンバルの片方をスタンドに固定(もしくはアタッチメントでB.D. に固定)して演奏することを想定しています。途中でB.D. のマレットをS.D. スティックに持ち替え、楽器配置をを工夫すれば、無理なく演奏できると思います。
　この編曲は2010 年1 月に静岡県立掛川東高校吹奏楽部打楽器セクション(メンバー:赤堀、中山、萩原、松本、山崎、長嶋、野口、水野)により、アンサンブルコンテストで初演されました。
また、初演時には静岡在住の打楽器奏者・作編曲家の杉浦邦弘氏より楽器用法や音の配置、奏法など様々なアドバイスとご指導をいただいたことを、感謝とともに付記いたします。