第1曲は非常に緩やかで、拍節感の希薄な「前奏曲 Prelude」です。
静かに、遠くからきこえてくるかのように始まり、一気に駆け上がって放たれるピアノの合図をきっかけとして頂点を迎えます。しかし、それは一瞬の叫びです。この前奏曲は、代わって登場する息の長い旋律でまとめられ、ピアノに余韻が残されます。
その余韻に導かれて始まる第2曲「幻想的舞曲 Fantastic Dances」は、いずれもはっきりとした拍節感をもつ2つの部分とコーダからなっています。
まず始まるのは、ガヴォットふうの行進曲です。規則的なピアノの動きを土台に、2本のバス・トロンボーンが寄り添ったり離れたり、時にはぶつかり合ったりしながら、フレーズごとに異なった音程関係を中心に進みます。
その後短い間奏をはさんで雰囲気が変わり、新たに始まるのは8分の6拍子によるシシリエンヌふうの部分です。
ここでは、最初に第1バス・トロンボーンに提示される2つが主要な旋律となります。
この2つの旋律が反行を含むカノンの技法で重なり合い、最後には3つのパートすべてによる3声のカノンまでがあらわれて様々な表情をみせるのがこの部分です。この部分の終わりでは第1曲の要素も顔を出し、そのまま第2曲前半の終結部が半音下で再現されるところからコーダが始まります。作品全体の断片的な回想は半ば強引に打ち切られ、作品は終わりを迎えます。
2本のバス・トロンボーンとピアノというあまり先例のない編成による作曲は、私にとって初めての経験であり、非常に難しいものでした。そんな中で、初めてこの編成と向き合う自分にできることは何かを考えながらできあがったのがこの作品です。
あるときは柔らかく、あるときは野太く、また、あるときはピアノを背景にバス・トロンボーンが朗々とうたってみたり、あるときはそれに負けじとピアノが主張してみたり・・・それぞれの場面で様々な表情をもって、作品を通してひとつのストーリーが生み出されることを願っています。
この作曲の機会をくださり、そして素敵な初演をしてくださったTrio Sync.の皆さんに、作曲・出版に際して多大なるアドバイスをいただきました。心から感謝いたします。
(富岡篤志)
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