大切な物が壊れたら悲しいのは、それがもう二度と自分の手のひらに乗らないから?…そうではないだろう。大切な人が亡くなったら悲しいのは、その肉体が生命体ではなく、ただの有機物になってしまうから?…勿論、そうではないだろう。
何かを喪失する悲しみとは、失われた事物に対してではなく、自身の心のうちに視点をおいているのではないかと感じることがあります。失われるのは、私の心の一片。
欠けてしまったものを見つめることは寂しいことですが、しかし同時に、とても美しい行為だと思います。
2008年の秋頃、立続けに二つの室内楽作品を書きました。編成も音楽語法も異とするものですが、創作に至る動機が共通しており、それぞれに同一のタイトルを付け、本作品はその第二番にあたります。龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部に所属されている三名により、アンサンブル・コンテストに臨むための作品として委嘱されたものでありますが、(音楽的には)自由に書いて良いとのことでしたので、当時の私が書きたかったものがそのまま表層化されたものであると思っています。(井澗昌樹)
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