本作は[Le Seuil Ensemble]の委嘱による木管五重奏作品を、龍谷シンフォニックバンドの要請によりクラリネット五重奏へ編曲したものである。
この作品では、主に無調的な旋律の美しさと和声の美しさの両立が志向されている。
全体は小規模の3つの部分から成っており、冒頭では12音的な旋律美を1st Cl.が一手に引き受け、それに伴う背景は調的な叙情性を欠くことなく細心の注意を払ってハーモナイズされ、安直な機能和声が聴こえることを徹底的に嫌っている。そして徐々に和声と律動が緊張度を増し、ataccaで第2部へ入る。
ここでは対位法的な書法とTutti、そしてヘテロフォニックな書法により五重奏という形態に於ける様々なテクスチュアが探求され、展開されている。楽想としては非常に抽象的だがやはりどの瞬間を切り取っても旋律線と縦の響きは厳密にコントロールされ、所謂ドミナントとトニックに近い関係を生み出し推進力を得ている。
7拍子の舞曲から始まる第3部は、これ自体がさらに3つに分かれたコーダとなっている。舞曲では旋法的な音組織とリズムの趣向が際立つ。それが収束した後、新たな技巧的楽想から冒頭の様相へ回帰し、曲を閉じる。(中村匡寿)
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