「勇者のマズルカ」は2012年に第23回朝日作曲賞を受賞し、2013年度全日本吹奏楽コンクール課題曲(I)として採用された。いつの日かこの作品を、木管楽器を中心とした室内楽曲として仕立て直したいと思っていたところ、フレキシブル版楽譜出版の機会をいただいた。
「マズルカ」はポーランドの民俗舞踊で、元々は農民たちの踊りから派生したものである。音楽的には3拍子のリズムだが、1拍目に重心をもつ「ワルツ」とは異なり、2拍目もしくは3拍目に大地を踏み鳴らすような力強いアクセントが現れるのが特徴。
クラシックの世界ではショパンの作曲した50を超える一連の作品群が有名であるが、こちらはもちろん民俗舞踊のための音楽ではなく、マズルカの音楽的特徴を用いて芸術音楽に昇華させたピアノ作品である。このほかに、チャイコフスキーの「白鳥の湖」やドリーブの「コッペリア」などのバレエ音楽に現れる「マズルカ」や、管弦楽曲ではハチャトゥリャンの組曲「仮面舞踏会」の「マズルカ」などがよく知られている。いずれもショパンのピアノ音楽と同様、民俗的な音楽の特徴を用いて芸術音楽に昇華したものである。
私自身、トランペット奏者としての活動を通してこれらオーケストラ作品としての「マズルカ」に親しんできた。その経験が「勇者のマズルカ」を作曲するきっかけとなっており、本作品ももちろん本来のポーランドの民俗舞踊ではなく、「マズルカのリズムの特徴を含んだ楽曲」をイメージしている。
へ短調を主調とする本作品は、一般的に言われる「長調=明るい調、短調=暗い調」という単純な分類ではなく、その音楽・リズムの激しさから、短調の中にむしろ「困難に立ち向かっていく力強さ」のようなものを感じながら演奏していただきたい。そしてまさにその事が本作品のタイトルを「勇者のマズルカ」とした所以である。中間部分では一転、マズルカのリズムから離れ、変ニ長調に転調。独特なベールのかかったような、柔らかく甘美な響きの中でフレーズやハーモニーがロマンティックに展開されるような音楽を目指している。
室内楽(吹奏楽小編成)・アンサンブルならではの研ぎ澄まされた響きやリズムによって、吹奏楽での演奏とはまた違う魅力で作品を演出していただければ幸いである。
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