日本人にとって心の故郷ともいえる京都、その北西部に位置する嵯峨野は古(いにしえ)の歴史を今も語るかのように趣に満ちた土地です。この作品は、その印象をつづった交響詩的作品であり、次の4部から構成されています。
第1部 嵯峨野へ
一人の傷心の青年がふと旅に出る。京都に降り立ち、嵐山を目指す。
嵯峨野に入り、思いにふける青年。いまだ憂いは消えない。
第2部 風の道
うつぶせ気味で竹林の道を歩く。
一陣の風が吹き抜ける。
風の音にざわめく竹林
彼は、風が彼の身体を吹き抜けていくかのような錯覚におちいる。
苔むした神社に、古(いにしえ)の時を想う。
第3部 川のほとり
気がつくといつの間にか、川のほとりに出る。
おだやかに流れる川に横たわる三日月のような橋
河原に座っていると、少女の唄う恋歌が聞こえてくる。
おだやかな日差し、川のせせらぎ、恋歌、目の前には嵐山の森。
時を忘れてたたずむ青年。
第4部 旅立ち
再び竹林の道から嵯峨野に入り込む。
青年の憂いは、今や心の葛藤へと変わっている。
おだやかな日差しは雲に隠され、茶屋ののれんが風にそよぐ。
憎しみや迷いを吹き飛ばすかのように、風が一段と強まる。
やがて、迷路のような道から急に広がった空間に出る。
雲は晴れ、風も弱まり、まぶしい日差しの中で草木がおだやかに微笑んでいる。
今、生きていることはなんと幸福なことか。
誰かがより良く生きよと青年にささやく。
青年のまなざしは、過ぎ去った時へではなく、すでに「未来」を見つめている。
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